こんにちは。
さやだんです。
最近、こんなことをよく聞かれます。
「法務教官って、刑務官より楽ですか?」
「楽なら、刑務官やめて法務教官になろうかな〜」
僕の答えは、「感じ方は人それぞれ」です。
その理由として、どちらにも楽な面とそうではない部分があるからです。
今日は、その法務教官の仕事内容について僕の経験も踏まえて説明します。
少年だから楽そうって軽い気持ちで法務教官になると後悔することも。。。
実際、僕も最初は戸惑いましたよ・・・・・。
目次
法務教官は基本的にみんな泊まりがある
刑務官は、大体、どの施設でも4日に1回、24時間勤務があります。(施設にもよります)
いわゆる夜勤班での勤務です。
この夜勤班に組み込まれるのは、若手中心になるので、例外はあるにせよ、中堅以上になれば、大抵の場合、日勤勤務者(月〜金、朝から夕方まで)になることができます。
やっぱり、ベテランになってからの夜勤は堪えますからね。。。
でも、一方で、法務教官はどうでしょう??
幹部は、当直ローテーション、他の職員は、基本的におよそ6日に1回泊まり勤務があります。(施設によって異なります。)
しかも、刑務官と違って、いくらベテランになったとしてもずっと泊まりの勤務があるんです。
ずっとです。本当にずっと・・・・。
僕の元同僚の先生(←法務教官は、お互いを「先生」と呼び合います。)も、定年になるまで泊まり勤務をしていました。
しかも、非番(夜勤明け)で帰れる時間が遅い。。。
刑務官は8時半に一応解散にはなるけど、法務教官は10時過ぎまでかかります。。
しかも、少年との面接があったり、成績調整会議が組まれていたら、さらに遅くなります。
なので、泊まりに関しては、もしかしたら、刑務官の方が楽かもしれません。
夜勤に関しては、刑務官の方が人数が多いし、役割分担もされてるから楽かもしれません。
法務教官は、基本的に全部自分でやらなくちゃいけないから、大変かもしれないですね。。
少年は心情面がデリケートなので面接回数が多い
僕が刑務官の時は、受刑者に対しての心情把握はまあまあ徹底してたと思いますが、
少年院での勤務を始めたばかりの頃は、
「ここまで考えなくちゃいけないの!?」
って考えることが少なくありませんでした。。。
指導で不貞腐れた少年に面接を実施したら泣き出したり、反抗的な少年に対してロジカルに説明しても納得どころか、余計に激昂したりするなど、とにかく、心情面で未熟なので、面接回数が多くて苦労しました。。。
特に、刑務官を経験した人は、少年たちの処遇に戸惑うかもしれないです。
本当に子供って感じなので。。。
成人の受刑者では考えられないほどの面接をやってました。
ちなみに、僕が担当していた少年ですが、指導するとよく泣いてました・・。
とにかく、自分の感情をコントロールすることが苦手な子が多いので、流されないようにしっかりと向き合っていかないといけません。
刑務所の場合は、受刑者の心情を安定させるための担当面接はほとんどありませんよね。
やはり、成人と少年、そして、刑罰か否かによって、処遇は全然違ってきます。
教育に関して、熱い職員であれば、向いてるかもしれませんね。
体育の授業は全部自分でやる
これは刑務所にない業務です。
体育指導、運動に自信がなければ、正直、少年たちからナメられます。
ちなみに、メニューも自分で考えなくてはいけないけど、そのメニューをこなせないと、面目が立ちません。
僕は、筋トレメニューとマラソンメニューを自分で考えてやりましたけど、50分間やり続けるのは流石にしんどかったです・・・。
また、少年院には、剣道指導もありましたが、これに関しては、指導可能な法務教官が持ち回りで指導を行っていました。
刑務官には剣道有段者が多いので、任されることが多いと思います。
ちなみに、一応僕も有段者なので、剣道指導を任されることがありましたが、ごく稀に強い少年もいます(笑)
また、そのほか、特に土日に体育指導が入れば、自分でメニューを考えて実施しなければなりません。
また、夏には、水泳指導がありますが、これも実際にプールに入って教えることになるので、最低限、クロールと平泳ぎはできないと厳しいでしょう。
基本的には少年たちと一緒にプールに入り、指導を行っていきますが、泳げないと超ダサいです。。。
泳げない少年たちに泳ぎを指導できないと意味がないので、必ず泳げるようになっておかなければなりません。
さらに、練習メニューも事前に用意しておかないと、当日グダグダになる恐れがあるので、遅くとも前日までには用意をしておきましょう。
他には、サッカーなどの球技、マラソンなど、体育授業に備えて、日頃の運動も必要になるので、法務教官を目指している方は、常に運動を心がけるようにしておきましょう。
ちなみに、授業は1コマ50分なので、綿密にプランを考えておかないと、時間が余って手持ち無沙汰になってしまうこともあります。
とにかく体力勝負の体育指導は、刑務官にはない業務なので、もし刑務官で、今から法務教官を目指す方は体力も鍛えておきましょう。
あと、結構、調子に乗り始める少年たちもいないこともないので、その少年たちにきちんと注意して、授業を引き締めないと、学級崩壊みたいになったり、怪我人が出て大変なことにもなりかねません。
しっかりと引き締めていきましょう!
熱血体育教師タイプの方にはピッタシの仕事だと思います!!
熱い気持ちを持っていると自覚できる人はぜひ挑戦してみてください!
授業は全部自分の責任で
中学生などの義務教育を終えていない少年たちに勉強を教える外部講師の先生を除いて、基本的には自分でやらなければなりません。
また、実科と言って、溶接や農園芸、土木、洗濯などなど、これらの指導もあり、それぞれの専門知識を身につけなければならないので、勉強が結構大変です。。。
そして、それ以外の授業形式で行う座学。
法務省指定の教材を使う時は、自分で事前に内容をおく把握しておいて、相手にわかるように説明ができるようになっておく必要があります。
さらに、生活講話といって、特にテーマに指定はなく、社会生活に必要なお話をフリー形式で行う授業もあって、僕の場合、準備が大変でした。
もし、話が面白くなかったら、少年たちの顔はこんな感じになります。
「・・・・・」
中には、プリントの準備も必要となる授業もあったりして、結構忙しかったりします。
もし、準備不足で、子供たちから質問されて答えられなかったらちょっとダサい思いをするでしょう(笑)
刑務所での刑務作業と違って、作業技官がいるわけではないので、教育部門に配属されたら、授業の段取りから進め方まで、教材に沿って自分でやらなければならないということを頭に入れておきましょう。
中には、「職業生活設計指導」などなど、あまり馴染みのない教科があったりと、事前に予習が必要なものもあるので、家に帰ってからググったり、実際の授業の時間配分を計算したりと、慣れるまではなかなか忙しい日々が続くものです(笑)
ただ、それが意外と面白かったりもするかもです。
あと、パソコンの授業もあるので、ワード、エクセル苦手だという人は、少年たちの質問に答えられないと相当寒い思いをしますが、I T系に強い人だと、少年からの信頼も厚くなります。
たまに、結構パソコンに詳しい少年からの質問に焦ることはありましたけどね(笑)
準備不足は本当にダメです。
一度、そういう面を見せてしまうと、学級崩壊のような現象も起きてしまいます。
行動観察をつけ、成績をつけなければならない(事務処理多し!!)
行動観察は、刑務官でいう「保護室への収容日誌」をイメージすればいいかなと思います。
要するに、変わった動静があれば、それを該当少年の行動観察簿に記録していくものです。
そして、成績をつけていくに当たって、該当少年も他の少年も納得する形で付けなければなりません。
これがなかなか大変なんですけど、幹部は、できるだけ早く進級させて早く退院させたい一方で、現場職員は、きちんと生活できていない少年は厳しくつけて、完璧な状態で退院させたいという、成績をめぐって相反することがあるのです。
ただ、理由を説明できれば問題はないのですが、少年の間でも、「なんでアイツが進級するのか」など、不満をいうケースもあって、いろんなことに気を遣います。
これは刑務官にはなかったことだと思いますけど、この点に関しては、刑務官の方が楽と言えるかもしれませんね。。。
出院のための成績をつける会議が長い・・・
少年たちは、少年院に収容されると、3級からスタートして、2級前期、2級後期、1級を経て出院という流れになります。
非行にもよりますが、ほとんどの場合、およそ1年程度で出院することとなります。
ただ、それは行状と成績が問題ないことが前提にはなりますけど、その成績をつけるのが、法務教官の仕事となります。
もちろん、成績も一定の基準を越えないと次の級には進めませんけど、成績を決めるのは、法務教官たちの会議で決まります。
そして、これが長いんです💦
やはり、少年たちの出院後の人生もかかってますし、きちんと更生してからでないと出院しても同じことを繰り返すことにもなりかねないので、かなり慎重に行われます。
基本的には、少年を担当する担任の意見が反映される形にはなりますが、他の法務教官からの意見も加わり、なかなか前には進まないこともしばしばです。
課題を作るのがしんどい
少年たちには、時として、課題を作る必要があります。
どんな課題かというと、主に作文関係の課題になりますけど、その課題を実施したあと、その少年の心にどのような変化が発生しているのか、狙いを上司に説明できる内容になっていないといけません。
ちなみに、どんな時に個別課題を出すかというと、規律違反行為を行ってしまった少年に対して、今の心境や自分に足りないものが何かといった、作文形式の課題が多いです。
もちろん、原稿用紙4枚以上とか、期限もあるので、少年たちからすると手強いのかもしれないですね!
中学生が入ると学校の成績もつけなくてはならない
中学生は義務教育期間中なので、実際に授業を行ったりします。
ちなみに、僕は英語が得意だったので、中学生に英語の授業を行っていましたけど、やはり、勉強することが習慣づけられてなかった子供達ばかりだったため、なかなか大変でした💦
宿題を出したり、「今日は教科書の何ページまでやらなければならないか」と考えたり、「本当にここまで理解しているのだろうか」、「ペースは早過ぎないか」などなど、心配することもたくさんあります。
さらに、学校の成績と同じように、教科の成績もつけなくてはならないので、当然のことながら、中間テスト、期末テストも行わなければなりません。
授業も教科書を使って行っていき、テストも教科書の内容に基づいて作成しなければなりませんし、その作成時間も結構かかります。
僕の場合は、夜勤中の仮眠時間に作ったりしていたので、日々フラフラの状態で勤務していたのをよく覚えています(笑)
そして、極め付けは高校受験を控えている少年が、出院のタイミングで受験をしたいと希望した場合、受験会場まで連れていかなければならないんです。
そうなると、何かと気を遣う場面が多くて、刑務官の護送勤務とは一味違った緊張感が味わえます。
ただ、少年が見事に合格した時の喜びはなんとも言えませんよ。
少年の就職面接に同行することも
これは、僕も実際にやりましたけど、1級(出院3ヶ月前)の少年の就職面接に連れて行ったことがあります。
実際に何をするかというと、就職面接を調整した後、自分で車を運転して少年を面接地まで連れていくのです。
手錠はしていません。
この面接時、少年が出されたコーヒーを飲んだんですけど、次の日、少年は久しぶりのカフェインで夜ほとんど眠れなかったと言ってたのがとても印象的でした(笑)
何時間もかけて連れて行ったけど、彼が出院後、「数日で辞めました」って連絡が来た時、思わず、ずっこけてしまいました。。。(笑)
少年院、これからはどうなるかはわからない
別の記事でも書きましたが、とにかく、非行少年の人数が年々減ってきています。
変な話ですけど、それは職員さんたちの努力のおかげで非行件数が減っているということなので、世の中的にはとても良いことだと思いますけど、やはり、法務教官さんたちは、失業するかもしれない恐怖もあるとのことです。
さらに、僕の元同僚の法務教官さんの多くは、
「いずれ、刑務官にさせられそうで怖い」
と思っているそうです。
僕の元同僚によると、法務教官からしたら刑務官は未知の領域で、やはり恐怖心があるとのことでした。
検証結果
以上から、刑務官も法務教官も両方経験した僕の意見ですが、必ずしも法務教官の方が楽とも言えません。
業務自体は、アウトプット力が求められるけど、やりがいを感じられる機会は断然法務教官の方だと思います。
授業ができる熱血体育教師だと思っていただくといいかもしれません。
また、業務も確かに法務教官の方が大変な部分があるかもしれないけど、得られるものも大きいですね。
法務教官を経験した僕にとって、この3年間は財産になっていて、民間企業でのプレゼン力に大きく貢献したと感じています。
刑務官を続けるにしても、法務教官業務を通じて、プレゼンや説明が上手になると思うので、将来を見据えると、僕は絶対に経験しといた方がいいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか??
法務教官は、大人の受刑者ではなく、非行少年たちを処遇することになるから、大人よりも楽だと感じるかもしれません。
ただ、実際はやることも多いし、大変なこともたくさんあるので、以下のことを踏まえて決心してもいいかもしれませんね。
・法務教官はみんな泊まりがある
・授業や体育は自分でやる
・事務処理が多い
・少年を自分の運転で就職面接に連れて行くことも
・これから法務教官も刑務官になるかもしれない
今日はここまで読んでくださってありがとうございました!
楽さだけを求めて法務教官を希望するのだったら、それはやめた方がいいです。
やることも多いし、決して楽ではありません。
ただし、やりがいと雰囲気という点では、刑務所よりはいいと思います。